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 敷中はこれまでにコロイド状異方性ナノ粒子自己組織化による機能材料の創製に関する研究を展開している。自然界では分子の形状 (アスペクト比)・キラリティー・二次的相互作用に応じた空間構造を持つコロイド粒子の自己組織体により、高速な構造転移や構造色を始めとした特性が発現されている。例えば細胞骨格に習った棒状分子の作る自己組織体は、分子空間構造に応じた特異な力学的・光学的特性を発現すると期待されるが、人工的に設計した自己組織体空間構造をマクロな材料機能につなげる実験的検討は殆ど無い以上の背景を受け、コロイド状異方性ナノ粒子による集合体の空間構造制御を通じた新規材料化学の創製に資することを目的に下記に代表される研究を遂行している。

 以下の成果は東京農工大学重原淳孝名誉教授・富永洋一准教授および研究室所属の学生諸氏そして各機関所属共同研究者の方々のお力添えをいただき達成した内容であり、深謝申し上げたい。(研究業績の項参照)

1. 剛直円筒状無機高分子イモゴライトの自己組織体による高速応答性チクソトロピー性ゲル

 ナノチューブ状粘土鉱物イモゴライト (IG) のネットワーク様自己組織体をIG外壁に存在するアルミノール基 (Al-OH) のジカルボン酸 (:マレイン酸 (MA)) を介した架橋 / 静電反発により実現した (上)。ネットワークが作るハイドロゲルは高速なチクソトロピー挙動 (衝撃 / ずりに応じた粘度低下;擬塑性) を示す (最速3秒以内での固 / 液転移;一般には10倍以上の時間を要する)更にIGが剛直なナノチューブであるため、液状複合物内IGの流動配向に続く固化により一軸配向ネマティック液晶構造が付与でき、力学的・光学的・電気化学的異方性を持つゲルとして扱える。また有機高分子二重網目 (IPN) 化によりチクソトロピー性が排除出来るためIG空間分布が制御された異方性材料としての利用も期待される。(本成果に対し、平成26年度高分子研究奨励賞が授与された)

2. 環境適応型プロセスに従った非可食植物バイオマスの有用化成品への変換

  (森林総合研究所との共同研究)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木質を例とした非可食植物バイオマスは大半が多糖類・リグニンから成る。多糖類は砂糖 (Sugar) の重合体であり、リグニンは芳香族網目状高分子である。非可食木質バイオマスであるためプラスティックを始めとした機能素材としての応用が期待されているが、一般に強酸や強塩基を用いる過酷な抽出条件による変性および高純度単離の困難さにより、材料展開の例は数少ない。加えて抽出に高温・高圧を要するため多大なエネルギーを必要としかつ環境負荷が高いため産業展開において現実的な処理プロセスとなりえない。

 敷中と森林総合研究所の共同研究により、湿式粉砕と同時の多糖類酵素分解を通じ、非可食植物バイオマス全てを単糖とリグニンスラリーへと分離する「植物同時酵素糖化粉砕」を開発した(上図)。本プロセスは有害薬品や特殊反応プラントを一切用いず (50 ℃, pH5.0, 1気圧) 短時間 (4時間;既存粉砕法の1/10以下) の処理で済むため、産業化が見込めるのみでなく農山村オンサイトでの実施も可能である。単糖 (約70%の多糖類) は甘味料やバイオエタノールとして、リグニンは機能性高分子としてそれぞれ産業利用が可能である。特にリグニンは既存抽出法で得られる試料 (黒色粉末) とは異なり透明な難燃フィルム(上図)として扱うことが出来る。

 本系は非可食植物バイオマスを食物・嗜好品(酒)・エネルギー・機能性高分子素材とする道筋を示す研究であり、非可食植物を基幹原料とした新産業「農工業」の創製をも促すと期待される。

(本成果に対し平成26年度繊維学会奨励賞、第五回新化学技術研究奨励賞が授与された)

3. 非平衡状態を経たタンパク質自己組織化によるマクロスコピックなキラル秩序の創製

 タンパク質「チューブリン (Tu)」は自身の双極子モーメント (極性) に従い半剛直性円筒状自己組織体「微小管 (MT)」へ温度可逆的に集合する。応募者は非平衡状態 (Tu濃度勾配) 下でTu自己組織化をおこない、巨視的にTuの極性とMTのらせん構造を反映したキラル秩序体を創製した (上)。本秩序体はセンチメートルオーダーで欠陥を持たない極性 (キラリティー) 志向性のある液晶であり、その構造化原理は自己組織化の時空間制御によるタンパク分子キラル秩序化を促す新規な反応物理化学の提唱へと繋がる。

4. ナノスケールの生体分子重合/会重合に応じたマクロスコピックな相転移を示す

  合成高分子 - タンパク質ハイブリッド材料

 温度に応じた「チューブリン (Tu)」から「微小管 (MT)」への自己組織化は可逆的に起こる。応募者はTuの持つ一級アミンと共有結合を形成する官能基を持つアクリル系高分子を合成しTuと複合させ、Tu重合 / 解重合に応じた温度応答性ゲル / ゾル転移を示すハイブリッド材料を作製した (上)。本集合体はタンパク質の重合 / 解重合をマクロスコピックな材料物性変化として取りだした世界的にも珍しい研究例であり、上記に示した実験系と組み合わせ、温度応答性人工筋肉素材などへの応用が期待される。

 上記の他、ポリ置換メチレンの高分子物理・円盤状粘土鉱物ラポナイトと有機高分子による難燃性フィルムの創製・筋肉タンパクアクチンと有機高分子のイオンコンプレクス形成によるアクチュエータ素材の創製等についても研究経験がある。(研究業績の項参照)